夏の日の出来事


昨日のお昼の話です。
急にカレーが食べたくなり自転車に乗ってココイチに向かっていました。
道端のコカコーラの自動販売機に幼い兄妹*1が立っていました。
その横を通り過ぎた時、お兄ちゃんが小さな声で「すみません。すみません」と私に声をかけてきました。
一度は通り過ぎましたが、幼い兄妹が炎天下の昼日中に何をしているのだろうと気になって、兄妹のいる自動販売機に戻りました。

私が「どうしたの?」と聞くと
お兄ちゃんは「茶色の缶が買いたいの」と私に言いました。
茶色の缶は自動販売機の缶の中では250mlのジョージアでした。
ジョージアは一番上にボタンがあり、多分小さな子供では背が届かないのだろうと思い
おっちゃんが押してあげようか?」と言いました。

そこでジョージアのボタンを押しましたが、コーヒー缶は出てきません。
お金が自動販売機にいくら入っているのかを確認すると50円しか入っていませんでした。

私が「お金が足らないけど、もう持ってないの?」と聞くと、
妹が「お母さんからこれだけもらったの」と私に告げました。
私は「120円ないと買えないよ。」と言うと
兄妹は悲しそうな顔して「お母さんが買ってきて」としか言いませんでした。

汗を一杯に掻いている兄妹を見ていると、私は急に悲しくなり足りない70円を自動販売機に投入し、お兄ちゃんの身体をボタンの高さまで持ち上げてボタンを押させてあげました。
コーヒーの缶が出てきた時、兄妹はうれしそうな顔をしていました。

そこで私は、妹に「お嬢ちゃんは、のど渇いていないの?」と聞くと
小さな声で「家にお茶がチョットだけある。」と私に指サインと共に教えてくれました。

私は何だか胸が痛くなりました。 この暑いさなかに十分なお金を与えずに買い物をさせる母親にココロの中で怒っていました。 
しかし、兄妹はコーヒー缶が買えた事でニコニコしていました。

私は自動販売機に200円を投入し
妹に「好きなジュースを買っていいよ。」といいました。
妹はファンタグレープのボタンを押し、出てきたペットボトルをうれしそうに抱えました。

私が「じゃあね」と言うと
兄妹は「ありがとう」と小さな声で私にお礼を言い、そのまま振り返らずに歩いて行きました。

私はその後姿を見て自転車に乗って、兄妹とは逆の道を走り出しました。

私はあの兄妹にお金を与えてジュースを買ってあげた理由が、同情なのか単なる私の優しさなのかは未だにわかりません。

しかし、兄妹が夏の暑い中を自動販売機の前に佇んでいる姿を見た時、何故が自分の小さい頃の姿を見た気がしたのは事実でした。
もしかしたらあの兄妹に、小さい頃の自分ともうこの世にはいない兄の姿を見たのかもしれません。
暑い夏の日に私が体験した小さな出来事です。

*1:兄は5〜6歳・妹は3〜4歳ぐらいだと思います。